逃れられない人妻 ゆりか
「今日は新人歓迎会で遅くなるっていっていたけど……」
彼女の名前は名坂ゆりか。29歳。
結婚して5年目の専業主婦だ。
飲み会といっても夫はそれほど遅くなることは
まず無いので、こうして帰りを待っているのだ。
ピンポーン
と、チャイムの音が聞こえてきた。
「あ、帰ってきたみたいね」
「はーい」
ゆりかは玄関へと向かった。
家に着いたら夫はチャイムを鳴らし、ゆりかが
それを迎える。
それが二人の習慣だった。
「えっ?」
扉を開けた瞬間、ゆりかは驚きを隠せなかった。
そこには酔った夫と、夫を抱えて立つ同僚と思わしき
男性がいたからだ。
夫がここまで飲んできた事はこれまで無かった事
だったし、夫を抱える男がゆりかの知っている
人物だったからだ。
「すみません、○×商事の麻倉と申しますが――あれ?」
忘れるはずも無い。
目の前にいる男は彼女がただ一度、
不貞を働いたときの相手だったからだ。
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